もの忘れとは

もの忘れというのは、年をとれば誰にでもみられる老化現象のことです。人は60歳を過ぎる頃から認知能力が衰えるようになります。人の名前が思い出せない、言葉がとっさに出てこないなどの経験があるという方は少なくないと思います。このような場合というのは、自然な老化現象と言えます。ただ、年齢を重ねるごとに発症率が上昇する認知症にも、もの忘れによく似た症状がみられるので、なかなかわかりにくいというのもあります。

この2つを見分ける方法のひとつに、体験したことの一部を忘れているか、体験していたことそのものを忘れているというのがあります。例えば、朝食を食べていたことは覚えていても何を食べたかを忘れているというのがもの忘れです。一方、朝食を食べたことも忘れているというのが認知症患者様の特徴です。またもの忘れの方については、もの忘れをしていることに自覚がある、日常生活に支障がないということもあります。

ただ普段の生活の中で、それを本人やご家族の方が判断するというのは困難であります。なお認知症と診断されたとしても、完治させることは現時点では難しいですが、進行を遅らせることはできます。そのため、早めに気づいて可能な限りご自身で行える範囲を維持するということも大切です。最近、もの忘れがひどくなったなど、認知症に似た症状がみられるという場合は、お気軽に当医院をご受診ください。ご家族の方からのご相談につきましても遠慮なくご相談ください。

もの忘れのイメージ画像

以下の症状に心当たりがあれば、お気軽にご相談ください

  • 数分前や数時間前に起きたことを忘れている
  • 何度も同じことを言う、あるいは聞く
  • 約束していることを忘れる
  • 慣れた道でも迷っている
  • 物事の理解や状況判断ができない
  • 時間(日付、曜日)や場所がわからない
  • しまい忘れ、置き忘れがよくみられる
  • 料理の味付けが変わっている

軽度認知障害

軽度認知障害とは、認知症で見受けられる物忘れなどの症状はみられるものの、認知症と診断される基準を満たしていない状態を軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)と言います。認知症の一歩手前とも言われますが、この状態であることに早期に気づき、対策を講じるなどすれば、必ずしも認知症に進行するというわけでもありません。

MCIは、正常な状態と認知症の中間状態とされ、この状態であれば一人での生活も可能ですが、記憶力や注意力は低下しているので、これといった予防をしなければ5年以内に約半数の患者様は認知症に移行すると言われています。上記で挙げたよくみられる症状などがあるという場合は一度ご受診ください。

認知症

認知症とは、認知症は特定の病気を意味するものではありません。脳の病気あるいは外傷などによって、記憶障害などをはじめとする脳の機能障害が継続的に起きることで病状が進行し、それによって日常生活にも支障をきたしてしまう病気を総称した名称になります。なお認知症の種類というのは70種類以上あるとされていますが、そのうち4つの認知症(四大認知症)が全認知症患者様の9割程度を占めると言われています。

なお認知症には中核症状と周辺症状があるとされ、中核症状は大半の認知症患者様にみられる症状です。具体的には記憶障害(記憶力の低下 等)、見当識障害(時間、空間、場所などを正しく認識できない 等)、実行機能障害(計画を立てる、物事を順序立てて行うことができない 等)、言語障害(失語)、失行、失認になります。ちなみに周辺症状は、徘徊、妄想、抑うつ、幻覚、暴力・暴言、失禁、不眠などです。

ちなみに認知症の治療については、現時点で完治させる方法は存在しません。ただ薬物療法や精神療法(心理療法)によって、進行のスピードを遅らすことはできます。そのため、早期発見はとても重要なのです。

主な認知症の種類

アルツハイマー型認知症

全認知症患者様の6割程度の方が発症する認知症です。これはアミロイドβタンパク質が脳内に溜まるなどすることで、脳内の神経細胞が脱落してしまい、それによって脳全体が委縮してしまう病気になります。その過程において、認知症特有の症状である中核症状や周辺症状がだんだん強く現れるようになります。男女比では女性の患者数が多く、高齢者になるほど有病率が高くなります(65~69歳では1.5%、85歳以上は27%)。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症とは、脳内にレビー小体という異常なタンパク質が発生し、大脳皮質や脳幹に集まってしまうことで脳内の神経細胞が減少してしまい、それによって認知症の症状が現れている状態をレビー小体型認知症と言います。主な症状ですが、認知症でみられる症状(中核症状、周辺症状、)のほか、パーキンソン病の症状(手足のこわばりや震え、動きが鈍くなる、無表情 など)も現れるようになります。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症とは、脳の中の前頭葉と側頭葉が委縮してしまうことで、認知症の症状がみられる病気です(委縮の原因は脳内に溜まる異常なタンパク質と言われています)。この認知症は、40~60歳の世代に発症しやすいのが特徴で、人の話を聞かない、異常行動(浪費、徘徊、万引き など)、性格の変化(無関心 等)などがみられますが、認知症の病気でよくみられる記憶障害は、ほぼ現れることはありません。

脳血管型認知症

脳血管型認知症とは、一般的には脳卒中とよばれる、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血といった脳血管障害がきっかけとなって発症する認知症になります。アルツハイマー型に次いで、多いとされる認知症です。この場合、脳内の血管の血流が悪化する、あるいは詰まるようになるのですが、これらが起きている部分の脳細胞に血液(酸素、栄養素含む)が行き届かなくなることで発症するようになります。そのため、認知症状がまだらの状態でみられることもあります。

なおこの場合の治療法は、脳血管障害の再発を防ぐことです。例えば、生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症 など)による動脈硬化からの発症であれば、その治療をしっかり行うことが大切です。