消化器内科について
口から肛門までの間には、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸と様々な器官があるのですが、これらは全部一本の管でつながっています。これを消化管と言います。この消化管と、さらに消化を助ける役割をする臓器の肝臓、膵臓、胆のうで起きたとされる症状や病気について診療していくのが消化器内科です。
以下のような症状があれば消化器内科をご受診ください(例)
- 慢性的なお腹の不調に悩んでいる
- 胃が痛む、もたれる
- 便通異常(繰り返しの下痢や便秘、血便)がある
- 吐き気がする
- 胸やけがある
- 体重が急激に減少した
- 食欲不振である
- 顔色が良くないと指摘された など
消化器内科で行う主な検査
消化器症状の多くは、腹痛、嘔吐・吐き気、下痢といったもので、これらは一過性であることも少なくありません。ただ患者様の訴えや症状などから詳細な検査が必要と医師が判断した場合は、胃部X線検査(バリウム)、腹部超音波検査(腹部エコー)や内視鏡検査(胃カメラ、大腸カメラ)などを行い、診断をつけることもあります。
腹部エコー検査について
腹部エコーとは超音波検査のひとつです。検査をする部位によって、心臓超音波検査(心エコー)、腹部超音波検査(腹部エコー)、頸動脈超音波検査(頸動脈エコー)などと呼ばれます。そもそも超音波とは、人の耳では聞き取れないとされる程の高い周波数の音や振動のことです。検査時は観察したい部位(腹部など)に向けて超音波診断装置の探触子(プローブ)から超音波を発信し、返ってきた反射波(エコー)を同装置が受信し、解析するなどして、調べたい部位が画像化されるというものです。消化器疾患の有無を調べるためによく行われるのが腹部エコーです。
同検査をするにあたっては、観察をしやすくするために前日夜から絶食をします。またある程度尿を溜めておくと膀胱内の様子も確認しやすくなります。検査時は、観察部位にジェル状のものを塗布し(ヒヤッとして冷たいです)、その上に探触子を当てていきます。検査時間については20分程度です。なお、腹部エコーで発見しやすい主な消化器疾患は以下の通りです。
肝臓がん、膵臓がん、膵のう胞、胆のうがん、胆のうポリープ、胆石症、腎結石(尿路結石)、腎がん、腎のう胞、膀胱がん、膀胱炎、前立腺がん、前立腺肥大、脾腫、脂肪肝 など
40歳を過ぎたら定期的な消化器がん検診を
また胃がんや大腸がんといった消化器がんは、早期から自覚症状が現れにくいという特徴があります。そのため、定期的な胃カメラや大腸カメラによる検査によって発見されたというケースも少なくありません。これらのがんは。早期に治療することができれば、予後は良好と言われています。鹿児島市では40歳以上の方を対象に胃がん検診(バリウムを使用した胃部X線撮影)、大腸がん検診(便潜血検査)を行っていますが、これらよりも精度が高いとされているのが内視鏡検査です。
当医院では、胃カメラも大腸カメラも行っています。市のがん検診(胃、大腸)で異常を指摘された、40歳を迎えるにあたって定期的に検査を受けたいという方は、お気軽にお問い合わせください。
内視鏡検査(治療)についてはこちら消化器内科の主な対象疾患
肝臓がん、肝硬変・急性肝炎、脂肪肝、胆のうがん・胆嚢ポリープ、胆石症、膵臓がん、膵のう胞 など
炎症性腸疾患とは
小腸や大腸の粘膜に炎症あるいは潰瘍が起きている病気のことを総称して炎症性腸疾患と言います。この場合の原因としては、腸内が細菌やウイルスなどの病原体に感染した、服用している薬剤の影響のほか、虚血性大腸炎(ストレス、動脈硬化、食生活の乱れ 等が原因)などが挙げられます。このように原因が特定されている場合を特異的炎症性腸疾患と言い、それぞれの疾患に対する治療が行われます。
ただその一方で原因不明のケースも少なくありません。この場合は非特異的炎症性腸疾患と診断されます。これに該当するのが、クローン病や潰瘍性大腸炎などの腸疾患です。ちなみに一般的に炎症性腸疾患と言う場合、これら非特異的炎症性腸疾患を意味することが多いです。
クローン病とは
消化管という一本の長い管の間であれば、どこの粘膜で炎症が起きてもおかしくありませんが、小腸や大腸の粘膜に炎症や潰瘍が発症することが多いです。炎症などの病変については、大腸のみで起きる、大腸と小腸ともにみられる、小腸だけに発生するといったタイプに分けられます。10~20代の若い世代に発症しやすく、潰瘍がさらに進行すると腸が穿孔(孔が開く)する、あるいは腸が詰まることによる腸閉塞が起きるようになります。
原因は特定されていませんが、遺伝的要因や環境的要因によって自己免疫反応が引き起こされるなどが考えられています。主な症状ですが、腹痛や下痢がよくみられる症状で、そのほかにも発熱や全身の倦怠感、体重の減少、貧血、下血などもみられます。なお同疾患は、国の指定難病を受けていて、日本では人口10万人あたりで27人ほどの患者様がいるとされています。
患者様の訴えや症状などからクローン病が疑われる場合、血液検査で炎症などの有無を調べる、内視鏡検査(大腸カメラ)を行うなどして診断をつけていきます。
治療に関してですが、完治させる治療法は現時点では確立していません。この場合、症状が良くなったり、悪くなったりを繰り返すようになります。症状が現れていない時期もしっかり治療しないと病状は徐々に進行していきますので要注意です。治療法については、栄養療法と薬物療法が中心となります。その内容については、患者様の症状の程度によって異なります。なお症状がひどい、腸閉塞や腸に穿孔がみられるなど、重度な合併症がみられる場合は、外科的治療が行われます。
潰瘍性大腸炎とは
クローン病と同様に国の指定難病を受けている腸疾患です。主に免疫異常(自己免疫疾患)によって大腸の粘膜に炎症や潰瘍が起きるとされているものですが、免疫異常を起こす原因は判明していません。ただストレスなどによって病状は悪化するようになると言われています。20代の若い世代に発症しやすいのも特徴です。
クローン病とは異なり、消化管の全てで炎症が起きるということはなく、病変がみられるのは大腸のみで、その程度は粘膜から粘膜下層と言われています。また炎症の範囲によって、直腸炎型(直腸にだけ病変がみられる)、左側大腸炎側(主に大腸の左側のみ病変がみられる)、全大腸炎型(大腸全体に病変がある)に分けられます。
主な症状ですが、けいれんがある腹痛、下痢、粘血便などで、体重減少や貧血などが現れます。このほか、関節痛や皮膚の化膿などの症状がみられることもあります。患者様は、これらの症状が良くなったり悪くなったりを繰り返していきます。
また診断をつけるために行う検査としては、血液検査(炎症の程度を調べる)、便潜血検査、内視鏡検査(大腸カメラ)などを行い、総合的に医師が判断していきます。
治療に関してですが、この場合も完治をさせることが難しいので、寛解を目指していく、もしくは寛解の時期をできるだけ長く維持する治療と言うのを行っていきます。具体的には薬物療法として免疫抑制薬、炎症を抑える薬(ステロイド薬 等)などを使用していきます。なお、薬物治療のみでは十分な効果が得られない、発症によって多量の出血や穿孔がみられるという場合は、外科的治療(手術療法)が行われることになります。